今年に入ってから書籍の購入ペースを落としている。というのも、読んでいないのに店の書棚に並べてしまった本*1がぽつぽつとあって、まずはそっちに手をつけているから。一旦は自宅の書棚に引き上げることも考えていたのだけど、そういう本に限って手に取られるお客様がけっこういらっしゃる。そんなわけで店には置いておいたまま、とにかく営業時間外に読んでしまおうという方針に変更した。どれも良い本ばかりだったので、少しずつ感想めいたことも書き残しておこうと思う。
橙書店にて/田尻久子(2019, 晶文社)
熊本の個人書店「橙書店」*2店主による3冊目のエッセイ集。昨年読んだ1冊目のエッセイ*3が気に入り、毎度著作が出るのを楽しみにしている。今回は橙書店を巡るひと・もの・ことにフォーカスが当てられていて、未訪の自分としては読んでますます行ってみたくなった。
書店が舞台なだけあって本もたくさん取り上げられているところ、本書も上述の一冊目と同じく、巻末に著者名とタイトルの一覧がまとめられていた。あの本なんだったっけ・・・と、記憶を頼りにページを行きつ戻りつするのも楽しいものだけれど、一覧になっているのはやっぱりありがたい。
コーランを読んでみよう/山田慶兒(2011, 編集グループSURE)
黒川創氏をはじめとするSUREお馴染みの面々が、科学史家の山田慶兒氏を導き手にコーランを読み解いていく。後半になるにつれ仏教やキリスト教との比較論なども出てきて話はどんどん広がっていくも、これもまたSUREによくある座談形式なので取っ付きにくさは薄い。イスラムにまったく疎い自分にもすいすいと読み進めることができた。
本文で言及されていた、気になる本:
・ゲオルギウ「マホメットの生涯」
・大川周明「回教概論」(竹内好が高く評価)
・オマルハイヤームの詩(知的な煩わしさからも解放されることの喜び=中国隠者との共通性)
わたしと霊性/服部みれい(2019, 平凡社)
地球の新しい愛し方/白井剛史(2019, 青林堂)
この2冊を並べたらピンと来る方もおられるかもしれない。うちは夫婦揃って某ネットラジオのリスナーゆえ、そういう意味で昨年の必読文献といってもいい2冊をようやく読み終えられて満足した。
感想を書きたいのは山々なれど、どちらも内容には触れない方がよいと判断し、以下、本当にどうでもいいことをひとつ。「わたしと霊性」の編集を担当されたKさん、昔パンラボをやっていたあのKさんと同じ方だとすると、当時書いていた個人ブログのある記事*4にコメントをもらったことがある。だから何?という話ではあるのだけれど、お名前が出てきたくだりを思わず二度見してしまった。
続々 果てしのない本の話/岡本仁(2019, オークラ出版)
本とその周辺(音楽、映画、人、店、街…カルチャー全般といった方がよさそう)をめぐるエッセイ。雑誌連載当時に目を通している回が多いものの、一気に読むと数珠繋ぎ感とともに、タイトルでもある“果てしの無さ”が際立つ。途中でしばしば起きる脱線がまた心地よい。
途中、以前読んだことのある「アメリカのライト・ヴァース」*5が出てきた。自分も映画「パターソン」からの流れで手に取ったのだけど、その頃とても慌ただしくしていて目当ての章*6を飛ばし読みするので精一杯だった。そんなわけでもう一度読みたい本もあれば、知っていて読んでいない本も知らない本も色々出てきて、やはり果てしないことである。
巻末には誠光社の堀部さんとの共作エッセイ「古本十八哩/18 miles of books」が収録されている。こちらも読み応え十分。とりわけ伊丹十三に対するお二人の捉え方にはかなり頷けるものがあった*7。