珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

珈琲時報(12)『京都喫茶店クロニクル』のことなど

・田中慶一さんの『京都喫茶店クロニクル』(2021, 淡交社)をようやく読みました。頁をめくる度に新たな発見と感心の連続でして、著者渾身の・・・!みたいなことばが紋切型でなく出てきてしまいますね。2019年のムック『KYOTO COFFEE STANDARDS』にも付されていた年表がさらに充実しているほか、巻末の相関図でお店どうしの繋がりまで一目瞭然。京都の喫茶好きならどこまでも面白く楽しめること請け合いですし、いち珈琲店主としても必読文献に位置付けたく。例によって本棚入りしておりますのでご来店の際にはぜひご一読を。いやー、すごい本が出ました。

京都喫茶店クロニクル 古都に薫るコーヒーの系譜

京都喫茶店クロニクル 古都に薫るコーヒーの系譜

  • 作者:田中慶一
  • 発売日: 2021/02/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

・それにしても珈琲店を軸にした田中さんのお仕事、神戸*1、京都ときたらやはり次は大阪なのでしょうか。『甘苦一滴』での丸福珈琲店の連載*2とか、面白く読んだ記憶があるのですが。本書での木村衣有子さんとの対談では次はミルクホール、みたいな言及もあり、そちら方面への展開にももちろん期待しています。

閑話休題。店内、豆のラインナップは中煎りにメキシコをご用意しています。エチオピアナチュラルが品切れとなり、代替品の扱いです。精製は水洗式なので味はすっきり、冷めてくると甘みが少し強まるような印象があります。なお、元々在庫が少なく、ご提供期間は1か月未満かもというところ。このメキシコが無くなったら次はルワンダが控えています。

*1:神戸とコーヒー 港からはじまる物語(神戸新聞総合出版センター, 2017)

*2:noteで甘苦一滴|Keiichi TANAKA|note

子どもの絵画教室 アトリエ・サジ作品展@アトリエみつしま(会期3/25~28)

ご近所のギャラリー「アトリエみつしま」さんで、昨日からグループ展が始まっています。今回は「子どもの絵画教室アトリエ・サジ」の作品展。

 昨日、みつしまさんから展示のDMをお預かりしたのですが、会期が明後日3/28(日)までと短いこともあり、こちらでもお知らせします。DM掲載作品だけとってもすごく良いのですよー。開館時間は11:00~18:00(最終28日のみ16:00まで)。週末のお出かけ*1とあわせて是非どうぞ。

 そうそう、みつしまさんといえば、今朝の京都新聞に昨年末の「ファルマコン—連鎖/反応」展に関する論説が掲載されています。あれも観応えのある展示でした。

*1:展示→蕎麦→珈琲、あるいは蕎麦→展示→珈琲などいかがですか

Add some books to my shelf <16>

忘れてもいいように〜Time Binding/片桐ユズル(アレクサンダー・アライアンス・ジャパン, 2020)

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 またまた面白い本に巡り合えた。2015年から毎月開催されてきたお話会「片桐ユズルに聞く。」における氏へのインタビューを元に、生い立ちから現在まで、約90年間の“ユズル史”をまとめた聞き書き
 ユズルさん(と厚かましくもお呼びしたい)の経歴については恥ずかしながらこれまでさほど存じ上げず、辛うじて連想できたのは『ボブ・ディラン全詩集』の装丁くらい。そんな状態で読んだものだから余計に、その仕事の幅広さに圧倒された。英語教育、米国詩その他の翻訳、関西フォーク運動、一般意味論、アレクサンダー・テクニークなどなど、同じ人が手がけたとは思えない。にもかかわらず、一冊を通してみると何の違和感を覚えることもなく、ご本人にとってはどれも自然なことだったのだなあと納得してしまうのが不思議。
 また、各分野に全然明るくない自分としては、注釈が非常に充実しているのもありがたかった。実弟中尾ハジメ氏が全面的に協力されたというだけあり、どの解説・引用にもいちいち興味をそそられる。巻末の著書一覧を眺めても気になる本が多数*1
 ちなみに本書は限定300部の自費出版。ということもあり、企画・編集に携わられたTさんのご縁がなければ自分も知らないままだった可能性大(ありがとうございます!)。昨年末の刊行以来残部は着々と減っており、いま改めて出版してくれる版元を探しておられるそう。手に取る人が少しでも増えればいいなと思うので、そのことも一緒に書き記しておきます。

↑これは公式情報を探していて見つけた予告編動画*2

*1:さしあたり手元に置きたいのはウィリアム・カーロス・ウィリアムズの訳詞集(1965年)。ネットでちょっと探してみたところ、まるで見つかる気がしない・・・。

*2:タイトルに「新刊本2019年」と記されているのは、「こんなにボリュームが膨らむと思っていなかった」(Tさん談)という、動画アップ当時の事情と思われます。実際の刊行は昨年末ですから・・・

雑誌雑感(5)ロンバケ40周年

レコード・コレクターズ 2021年 4月号

レコード・コレクターズ 2021年 4月号

  • 発売日: 2021/03/15
  • メディア: 雑誌
 

  大瀧詠一「ロング・バケイション」の40周年を祝し、今月はこの一冊を。特集冒頭のリード文によると、20周年、30周年のときもロンバケ特集だったそう(というか、たぶんどっちも読んでるな・・・)。今回の読みどころは松永良平さんの全曲解説と、細馬先生の「君は天然色」楽曲分析*1でしょうか。レココレ誌を買ったのはずいぶんと久しぶりでしたが、同誌のノリというかテンションは変わらず懐かしい気持ちになりました。

 ところで今回リリースされた40周年記念の再発版。レコードの盤面ラベルに誤記があったことがtwitter上で話題になっています。「雨のウェンズデイ」が「雨のウィンズデイ」だって。雨の日曜日に割とどうでもいいニュースでした。

*1:『うたのしくみ』増補完全版買いました!

「SとN」第5号を配布中です。

www.instagram.com

 先週日曜に届きました「SとN」第5号、さっそく店内に置いております。「九州喫茶案内」と並べていると、一体ここはどこ?という気になってきますが、やっぱり九州は魅力的です。

珈琲時報(11)東北に珈琲豆を届けていただきました

東日本大震災から今日で10年。昨年*1に引き続き、珈琲豆を被災地に届けていただいています。お届け先は気仙沼の災害公営住宅2か所(南郷、四反田)と福島・相馬の中村珈琲店。時節下、これまで執り行われていたようなセレモニーは控えることになったそうですが、“お茶っこ”のお供に当店の珈琲を使ってもらえるのは嬉しいことです。東北、次はいつ行けるかしら・・・

・話変わって今週の豆ラインナップ。中煎りエチオピアが週明けを待たずに完売しそうな状況です(既報のとおり、次の生豆入荷まで1~2か月程度お休みします)。その他は今のところ、特に変更などありません。

*1: 当ブログの過去記事です:

coffee-sankyo.hatenablog.com

雑誌雑感(4)最近読んだ雑誌など

 店に新しめの雑誌を置くと賑やかになっていいですね。しばらく店のマガジンラックがスカスカで寂しい日々でしたが、1、2冊増えるだけでも印象が違う。

・『ちゃぶ台』6号(2020年秋/冬号)

ちゃぶ台6 特集:非常時代を明るく生きる

ちゃぶ台6 特集:非常時代を明るく生きる

  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 久々に購入してみたら、読み応えある長めの記事が多くなった印象でした。「分解とアナキズム」(藤原辰史と松村圭一郎の対談)など特にそう。クロポトキンへの言及もあったりして、ここでいうアナキズムは鶴見さんのそれと似ているなーと。最近読んだ森元斎の論考*1でも、抵抗に関する鶴見さんの“脱構成”が引用されていました。そういえば鶴見さん今夏で七回忌ですね。

 

・『BRUTUS』932号(特集:音楽と酒)

  バーだけでなく喫茶店もいくつか載っていたので、店のマガジンラックに置きました。特集後半の「もしもピーター・バラカンがミュージック・バーを始めるとしたら。まずは揃えたい32枚のレコードストーリー。」が特に良いです。渋谷にあったロック喫茶ブラックホークの記事もあり。いまちょうどブラックホークに関する本(松平維秋「SMALL TOWN TALK~ヒューマン・ソングをたどって」)を読んでいまして、自分としてはタイムリーな特集でした。
 BRUTUSについては熱心な読者とはいえないのですが、本号のひとつ前、931号のカスタード特集もけっこう面白かったです。カスタードにさしたる思い入れは無いものの、ヒルトップ*2プリンアラモードの美しさにはぐっときますね。平松さんがエッセイを寄せていた西荻のグレースも気になる。

 

・『ステレオ時代』18号 

ステレオ時代 Vol.18 (NEKO MOOK)

ステレオ時代 Vol.18 (NEKO MOOK)

  • 発売日: 2021/03/02
  • メディア: ムック
 

 これは店には置いてないのですが、表紙に「tu: tu:」*3の写真が載っていて思わず二度見したという報告(誰に?)。表紙になるくらいですから誌面でも詳しく紹介されています。記事を一読してみて、このアンプの謳い文句である「ハイブリッド(アンプ))」の意味が朧気ながら理解できたような気がしました。

*1:「抵抗とは生である」群像2021年2月号

*2:山の上ホテルの1階喫茶。現在、席数を2割減らしているそうです。あの雰囲気でさらにゆったり過ごせるというのは贅沢なこと・・・

*3:店で使っている真空管アンプ