珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

最近の読んだ本

山の上の家-庄野潤三の本 (2018, 夏葉社) 

山の上の家―庄野潤三の本

山の上の家―庄野潤三の本

  • 作者:庄野 潤三
  • 発売日: 2018/08/01
  • メディア: 単行本
 

  発売後すぐに手に入れていたのになかなか手をつけられず*1、ようやく読了。タイトルの「山の上の家」は、庄野潤三が家族と暮らした川崎市田の家。「夕べの雲」など、家族をモチーフにした氏の小説を読んだひとであればお馴染みであろうあの家である。建物内外の写真、庄野家の息子・娘によるメモワールや、単行本未収録の小説まで盛り込まれている*2。巻末には全作品の一言紹介もあり、庄野潤三未読の方にもオススメしたい。といっても、刊行当時から書店の目立つところに並べられていたし、かなり話題にもなっていたけれど・・・。

 氏の小説には『「好きな、気に入ったものだけ」を繰り返し描くことによって現れる、心地よい小説のリズム』があるという。まったく当を得た指摘であり、この「好きな、気に入ったものだけ」を繰り返す姿勢は、小説家でなくても常日頃から心がけていきたいと思う。
 あと、夏葉社刊行物の例に漏れず、本書も本としての佇まいにグッとくる。カバーを外して現れる落ち着いた深緑と店内の焦げ茶色がよく合っていて、遠目に眺めているだけでも愉快な気分になった。

 

 かくも激しく甘きニカラグア/フリオ・コルタサル(1989, 晶文社)

 1988年から93年にかけて晶文社から発刊された「双書20世紀紀行」の一冊。このシリーズは中身も装丁も素敵なので、見つけたら確保するようにしている。本書はアルゼンチンの作家フリオ・コルサタルによる、サンディニスタ革命期ニカラグアを舞台にしたルポルタージュ。というか予想以上に全面的なサンディニスタ賛歌だった。シリーズの他の本はもう少し中立的というか、淡々とした見聞録といった色合いが強かったので*3、熱気あふれる文体が良くも悪くも印象的。

 珈琲屋をやっている以上、コーヒー産地であるラテンアメリカの歴史や文化については細々とでも勉強していきたいと思っていて、本書はそういう意味でもちょっとした取っ掛かりになった。

 

落語横車/和田誠1984, 講談社文庫)

落語横車 (講談社文庫)

落語横車 (講談社文庫)

 

 落語や噺家にまつわるエッセイ、著者による創作SF落語(星新一的なショートショートのノリ)、山藤章二山本益博との鼎談を収録。ほんとうに何でも器用にされますねこの方は…。

 

門司の幼少時代/山田稔(2019, ぽかん編集室)

zenkohdo.shop-pro.jp

  昨年の当店オープン前に、善行堂店頭で購入。これも先月になってようやく読めた。この方のエッセイはいつもしみじみ面白い。下関の綾羅木に別荘があったなど、見知った地名もちらほら出てきて親近感が。

www.cottage-keibunsha.com

 刊行記念イベントはプレオープンと完全に重なってしまって参加できず、残念だった。

 

*1:慌ただしいなか読むのは勿体ないなあなどと惜しんでいたところもある

*2:作品の舞台太平洋戦争末期なので一連の家族モノとは全く異なるのですが、これがまた明晰な文体と相まって大変面白くてですね…

*3:今まで読んだのがたまたまそういうトーンの本だけだったのかもしれないけれど