珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

「しるもの時代」が面白い

 木村衣有子さんのリトルプレス「しるもの時代」、ちびちび読み進めるつもりがあっという間に終わってしまった。

 気軽な感じのエッセイから徐々にギアが上がっていき、後半の「読む家庭料理」へ。飲食書評と銘打たれたこの家庭料理論がたいへん興味深く、飲食本好きとしてはこの章だけでも読めてよかった。2004年刊の『きょうも料理』*1を糸口に、古今の“家庭料理”を取り巻く精神論を掘り下げていくという構成。

 終盤に出てくる、料理研究家とミュージシャンをパラレルに捉える視点も面白かった。確かに料理家の人気や流行り廃りは、音楽のヒットチャートにも似て世相を反映することも少なくなさそう。時代が下るにつれて好みが細分化していくように思えるあたりも*2音楽と共通するような。ところで先の『きょうも料理』は料理研究家30名ほどを分類・図示しているそうな。どんな内容なのか非常に気になる。あと、ふと思ったのは、タイトルの「しるもの時代」は「知る者時代」でもあるのかなということ。フードファディズムみたいな流れへのちょっとした風刺?

 と、たまにはタイムリーに読後感を書き残してみた。店の本棚には早速、『味見したい本』と並べて置いてあります。

*1:山尾美香著、原書房。今までノーマークだったけれど、一刻も早く読みたくなっている

*2:それだけ料理のジャンルや料理家が増えたということもあるのか。そういえば昔は料理家って今みたいに大勢いなかったような気がする…