珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

食まわりの本いろいろ ~Add some books to my shelf <18>~

 ここ数か月で、食まわりの本が増えました。このジャンルは昔から一番読んでいるかもしれません。面白そうな新刊が常に出ている印象があり、新しいうちに追いつかないことも多いのですが。

料理の意味とその手立て/ウー・ウェン(2020, タブレ)

料理の意味とその手立て

料理の意味とその手立て

 

 ウーウェンさんが余すところなく語る、料理の基礎と勘所。クッキングサロンの講義録でもあるが、写真は全然出てこないのに教室の臨場感が伝わってくる*1。前々から、この方のレシピはとてもシンプルなところが良いなと思っていた。本書では調理法別、素材別に考え方を体系化してあって更に応用しやすそうなのがありがたい*2。これから自炊を始めるひとが最初の一冊に選ぶというのもアリだと思う。

 版元のタブレは、かつてクウネル編集長でもあった編集者の太田祐子さんがマガジンハウスを退社して立ち上げたレーベルだそう。後半に収められたウーウェン半生記的なテキストにもグッととくるし、長島有里枝さん撮影の料理写真も素晴らしいし、すごく良い本でした。

 つくるたべるよむ/本の雑誌編集部(2020, 本の雑誌社) 

つくるたべるよむ

つくるたべるよむ

  • 発売日: 2020/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  料理本についての本、という本の雑誌社らしい一冊。冒頭、久住昌之氏へのインタビュー記事から引き込まれる。料理マンガ原作者のビッグ錠や、ミナミの料理書専門店、波屋書房の棚が大きく取り上げられているあたりにもそのコンセプトがよく表れている。お弁当と家庭料理をテーマにした木村衣有子さんの論考はやっぱり面白い。表紙の卵の絵(写真かと思ったら違った)は現代美術作家の上田薫。

 たすかる料理/按田優子(2018, リトルモア

たすかる料理

たすかる料理

  • 作者:按田 優子
  • 発売日: 2018/01/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  上のウーウェンさんの本から、なぜか本書を連想した。料理本なのにテキスト主体といったところに似たような雰囲気を感じたのだろうか。ちなみにウーウェンさんのもこれも、先日久々に訪れたWAKUSEIさんに置いてあって、偶然に驚きつつお持ち帰り。最近某所で話題になっていたこともあり、改めて読みたくなっていたのでちょうどよかった。

 そば往生/石川文康(2002, 筑摩書房) 

そば往生

そば往生

 

  わかるようでわからない「そば往生」というタイトルは、落語の演目になぞらえたものだった。蕎麦好きとしては、なかなか乙な最期であるように思える。

 日本各地の蕎麦屋めぐりについての章では京都も出てくる。店名は明かされないものの、そのうち一軒はかつて新大宮商店街にあったという。時期は少なく見積もっても20年~30年前。文中の描写からするとこの建物ではないはずだが、商店街のどの辺りだったのかちょっと気になる。

  dancyu 2021年5月号 特集:食堂のしあわせ

 自分の定食屋好きを再確認。第二特集のひとり呑みも、ひとり呑みなんて殆どしないくせに面白く読んだ。井川さんの連載「東京で十年。」は代官山のモカコーヒー。珈琲店が取り上げられるのは珍しい気がする。だいぶ昔に一度だけ行ったことがあるけれど、日当たり良く明るい店内の心地よさが印象的だった。ちなみにこちらの「モカ」は慣用的なそれではなくイエメン専門という意味。当地の豆が簡単に入手しやすいとは思えず、イエメン一本で10年も商われてきたのはすごい。

Spectator vol.42 新しい食堂

スペクテイター〈42号〉 新しい食堂

スペクテイター〈42号〉 新しい食堂

  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 単行本
 

  食堂といえばこれも忘れ難い一冊。なぎ食堂の小田晶房さん、按田餃子の按田優子さんほかロングインタビューが読み応えあり。久々に引っ張り出し、dancyuの隣に並べております。

*1:なんとなく、受験参考書の"実況中継"シリーズを思い出した。あれまだ出てるのかしら。

*2:料理本を見て何か作る、なんて料理の仕方をしなくなって久しいのだけれど、読むなりさっそく回鍋肉を作ってみた。美味しくできました