珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

今月のマガジンラックから

 暮しの手帖 第5世紀13号(暮しの手帖社, 2021)

 いつもどおり全然タイムリーに書けていなかったので、今月といいつつもう28日であることには目を瞑り、かいつまんで紹介。多分、月が替わってもしばらくそのまま置いておくと思います。

  まず暮しの手帖。今回は後半の連載が充実していた印象*1。というか、別々の記事なのにちょっとした繋がりが感じられるような箇所が複数あり(※)、これが単なる思い込みなのか編集の妙なのかはさて置くとして、いつも以上に最後まで面白く読んだ。

 ※ひとつ挙げると三浦哲哉氏の新連載『映画のアン/ラーニング』。タイトルから鶴見さんの”学びほぐし”*2を連想したところ、次頁で本屋Titleの辻山氏が『私たちが外人だったころ』(鶴見俊輔著/佐々木マキ画)を紹介していた。奇しくも本号の表紙画は佐々木マキ画伯であり、これをもって連環構造がすっきり完結したような錯覚に・・・。

 

dancyu 2021年9月号(プレジデント社, 2021)

 スーパーマーケットと夏蕎麦、二本立て特集のどちらにも興味があるという珍しいパターン。スーパーの方は、首都圏の特徴あるスーパーに混じって下鴨のフレンドフーズが紹介されている。あそこに行くと大抵チェックするのは調味料やチーズ、お菓子の棚。お菓子はホームメイドのオリジナル品から紀州田辺のデラックスケーキ、西陣コレットさんのバナナブレッドまで揃えていて、いつも守備範囲が広いなと思う。あと、お総菜コーナーの充実ぶりにも定評があるところでしょうが、我が家で求めるのは専ら野菜コロッケであります。あれは美味しい。

 夏蕎麦特集は、栽培事情を掘り下げた冒頭の記事が特に良かった。秋蕎麦との比較や昨今の気候変動との関係など知らないことが多くて勉強になる(なんの勉強だ)。蕎麦屋の酒肴で家呑みを勧める趣旨の記事も役立ちそう。神田まつやの焼き鳥を拵えて現地に行った気になるか。他方、特集のハイライト的な美しい冷かけアレンジの数々は、個人的嗜好からかさほど響かず。どれも美味しそうではあっても、元々冷たいものが苦手な上に、蕎麦というとどうしてもざる一辺倒になってしまうので。いや、別にそんな言い訳めいたことを書く必要はないのですけど。

 

くらすことの本 (合同会社エプロン社 くらすことブックス, 2019/2021)

  二冊とも発行時期は少し前。森田久美先生(http://r.goope.jp/morita0358))が執筆もされていることを最近になって知り、遅ればせながら入手。どちらも非常に真摯な、それでいて押しつけがましいところのない爽やかな本だった。
 全体としてはホリスティックな考え方との親和性が高い誌面構成。とはいえ突飛な事物が現れたり急進的な提案があったりするわけではなく、“地に足のついた”という表現が似合う内容ばかりで、読んでいるうちに自然と落ち着きが増してくるかのよう。ちなみに二冊とも、白眉はやはり森田先生の記事。『料理綺譚』(第1号)も『お母さんへのお話会』(第2号)も、これから折に触れ読み返すことになりそう。

 と、たいへん満足度の高い読書体験だったのだけれど、タイトルだけ切り取ると何となく「暮らし系」の無難なムックみたいなのを連想してしまい、そこがちょっと勿体ないような気がした*3。でも表紙をめくって目次を眺めれば本書の意図や問題意識にはさほど労せず気づけるはずで、これは勝手な早合点というものでしょう。

*1:例えば随筆。くどうれいん→曽我部恵一ときて津野海太郎で〆なんて自分としてはとても豪華な人選である

*2:どの本だったか忘れてしまったのだけれど、鶴見さんがハーヴァード在学中にヘレンケラーと面会した際、彼女の話に出てきた英単語"Unlearning"を「学びほぐす」という日本語に解釈したらしっくりきた、みたいなエピソードがあった

*3:あと、口幅ったいのを重々承知でついでに言うと、版元のWEBが洗練された通販サイトのような作りであることも、こうした誤解(というかミスマッチというか)を助長してしまうように思え、同じく他人事ながらもどかしい