そばと私/季刊『新そば』編(文春文庫, 2016)
今日も爽やかな晴天=ざる日和ということで、懲りずに蕎麦まわりの本から。
こちらは季刊『新そば』に掲載されたエッセイを選りすぐった一冊。主題が蕎麦であるからには噺家や文士が名を連ねているのだろうと思いながら読み進めていくと、不意に予想もしなかった人が出てくる。またそんな人に限って非常に熱く蕎麦愛を語っていたりするのが面白い*1。
最も古いエッセイの初出が1961年だったので*2、この『新そば』はけっこう長く続いている雑誌らしい。といっても17×18cm、毎号50ページ程度のサイズだそうだから、雑誌よりは銀座百点みたいな冊子を想像した方が近いのかもしれない。たしかに老舗のレジカウンターには時々そういうの置いてありますね。小冊子好きな自分のことだから、どこかで何気なく手に取ったこともありそうな気がしてきた。
食の職/迫川直子(ちくま文庫, 2015)
手に入れやすい版元なのをいいことに後回しにし続け、気づけば文庫から6年、単行本からは10も経っていた。とはいえ書かれていることは至極シンプルかつ真っ当であり、経年で価値が損なわれるようなタイプの本ではない。新宿ベルク三大職人*3へのロングインタビューが予想以上に熱かった。
読んでから久々にホームページをのぞいてみたら、ベルクは今通販にも力を入れているよう*4。あのソーセージが自宅でも食べられると知り、珍しく取り寄せに興味がわいている。
鹿島茂の解説に膝を打ち、すぐまたはじめから読み直したくなった。こういう、解説から読み始めるといっそう理解が進むタイプの本ってたまにありますね。
某店の100円棚から発掘。明治末~大正初期の講演を5つ収録。どれも論旨が明快で話の運びも整然としている。百年以上前というのに掴みから締めまで違和感がなさすぎて逆に違和感・・・。現代の視点から眺めたときには、自分軸の重要性を度々指摘している点も見逃せない。そんな漱石先生が千円札の肖像画に選ばれたことは、昭和の時代になされた数少ない善行ではあるまいか(言い過ぎ)。
表題作「私の個人主義」については高校時代だったか、国語の教科書に取り上げられていた記憶があったのだけど、どこの箇所か全然思い出せず。