珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

補助線のようなもの ~Add some books to my shelf <26>~

僕たちはどう生きるか/森田真生(集英社, 2021)

 森田真生氏の新著。今回の本はタイトルからして自分にもいけそう・・・と思っていたところ*1、Hさんのご好意で読む機会に恵まれた。目を通さずとも薄々わかりそうなものだけれど、書名に対する正面きっての解答は提示されない。その代わり、環境問題から農、食、教育・・・と拡がり続ける思考の連環を前にすると、個々のトピックについても、もっと根元的な、それこそ生き方のように大きなテーマについても否応なく考えさせられる*2。とはいえ決して深刻すぎるムードに陥らないのは、著者が積極的な意味づけをもって「弱い主体」への転回を選び取るとともに、低い目線で世を眺め、考えることを徹底しているからだろう。

 とにかく、さらっとしている割に参考文献は多く、あたらしい視点が山ほど提示されるありがたい一冊だった。中でも"humilation"、"attunement"、"ecological awareness"と次々引き合いに出されるティモシー・モートン(Timothy Bloxam Morton)の印象が鮮烈。前述の「弱い主体」も近著からの引用ということだし、次はとりあえずこの人を掘り下げてみようと思った。

 その他、『協生農法実践マニュアル』(舩橋真俊)、『学校へ行く意味・休む意味』(滝川一廣)、「依存先の分散としての自立」(熊谷晋一郎論文)、『ガチガチの世界をゆるめる』(澤田智洋)にも興味津々。あと土壌研究の藤井一至氏については、最新号の暮しの手帖枝元なほみと対談している。たまたま読んだばかりだったのでよく覚えていた。

*1:氏の専門分野である数学が昔からたいそう苦手な所為で、気になりつつも長いこと手を伸ばしかねていた

*2:そういう意味で、敢えて苦手な数学に例えていうならば、答えのとっかかりにはなり得る程度の、ちょっとした補助線を教えてもらったような感じというか