昨秋自主刊行されたkaiさん*1の掌編小説「Peaceful pluot pie」をようやく読了、本棚に並べています。今年に入ってから書店にまったく行けておらず、この頃ちょっと本棚も停滞気味だったのです。そんな折、ご近所の歩粉さんに本書が入荷していると知り、喜び勇んで出かけたのが少し前。元々少部数刊行ということであきらめかけていただけに、すぐ近くで手に入ったのは僥倖でした。
お話の舞台はカリフォルニア州のバークレー。わたくしかれこれ10年近く前、同じ西海岸のシアトルに2週間ほど滞在したことがありまして、読みながらそのときの色々を思い出しましたね。
シアトルはスタバの一号店*2をはじめコーヒーの街としてつとに知られていて、日本では”サードウェーブ”という言葉が使われていたかどうか、というくらいの時期でしたけども確かにコーヒー屋は山ほどありました。率直にいって酸っぱいコーヒーばかりの中*3、州立大学近くのAllegroはちゃんと?苦い珈琲を出してくれていて、滞在中一番のお気に入りでした。壁一面にフライヤーがぎっしり貼られていたり、学生街の喫茶店然とした佇まいにも惹かれて日参したものです。レジカウンター下のガラスケースには毎朝ドーナツがぎっしり詰まっていて飛ぶように売れていくのですよ。みんなほんとに、コーヒーとドーナツで朝ごはんにするんだなーと思いましたね。そのほかにも毎日のようにどこかで立つファーマーズマーケットとか、体育館のように広々したレコード屋とか、今に至るまで善きイメージに彩られたアメリカ体験でした。と、どんどん芋づる式に記憶が甦ってくるのは、本書で描かれる街の風景がそれだけ鮮やかだからなのかもしれません。しかしあっさりと終わってしまう一冊なので、スピンオフというperfect pumpkin pudding*4も続けて読みたくなりました。