珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

手前味噌2020

 昨日、営業後*1に毎年恒例の味噌づくりを敢行した。一般的には寒仕込みが無難なのだけれど、ついつい先延ばしにしていたら桜が咲いてしまい、ようやく重い腰をあげた次第である。今年は大容量に対応すべく道具や容器を新調したので、取り掛かってみれば作業はさくさくと進み、合間に店の片付けや夕食を挟んでも22時過ぎには無事完了することができた。
 我が家では2014年から始めた手前味噌、直近3年ほどはご近所の古民家*2で友人知人と一緒に仕込んでいた。界隈にはその筋の達人が多くて自分たちも勉強になったし、広い場所と大きな道具を使って大量に仕込むのはとても効率がよかった。大豆はおくどさんの大釜で一気に茹でられる上、だだっ広い畳の間を使えると茹で大豆をつぶす*3のも楽々だったのだ。
 翻って今年は一気に環境が変わり、どうしようかな・・・という思いが一瞬だけ頭をよぎったことは否定しない。しかしながら、ひとえに美味しすぎることから、仕込みを控えるなどという選択肢は採り得ないのであった。店を始めてから消費量が増えていることもあり、二人だけで仕込む量としては過去最大の、出来上がり8kgを目指して材料を揃えた。あとで書き足すかもしれないけれどメモ代わりに記しておく。
 大豆(乾燥)・・・2kg(茹で上がり約5.2kg)
 米麹(乾燥)・・・2.4kg

    塩・・・1.1kg
 ごく普通の米味噌なので、レシピというほど複雑な手順はない*4。コツみたいなものを挙げるとすると、我が家の場合は以下2点だろうか。
 ・乾燥麹は水で戻さない(潰した茹で大豆の水分に吸水させればよい。味噌玉を作るとき「適宜大豆の煮汁を足す」といった指示をよく見かけるけれど、水分を足すと味噌玉がまとまりやすい反面、どうしてもカビが生えやすくなる)
 ・味噌表面の密閉には酒粕を使う(隙間なく覆いやすい。ちなみに熟成が進んだ酒粕はそのままでもアテにできるし、粕床としても使える)
 昨晩も製菓担当と話していたのだけど、味噌を仕込んでいるとだんだん元気になってくるのが不思議*5。季節を問わず少量でも作れるし、やってみたら意外と簡単なのですよ。しかも美味しくて元気にもなるなら言うことなしではありませんか。ということで興味のある方はご来店の際にでも遠慮なくご質問くださいませ。

 最後に。味噌仕込みについては以前も商品紹介の小冊子*6に書いたことがあり、PCを検索したら出てきたので再掲する。これを見ると2015年の仕込み量は3kgだったらしい。(「続きを読む」をクリックしてね)

 

 

 雑記:手前味噌
 豆は豆でも大豆の話です。純米酒を好むようになってから、発酵と発酵食品への探究心は増す一方。昨夏に自家製糠漬けを再開し、秋には糠を流用して「へしこ(鯖の糠漬け)」を試したのに続き、とうとう味噌を仕込みました。先だって白味噌作りのワークショップで習得したノウハウを早速応用した次第です(その白味噌は最近美味しく完成しました。自然な甘みとすっきりした後味。そのまま食べても美味しい!)。仕込んだのは米麹だけのスタンダードな米みそで熟成期間は1年の予定。余った麹で塩麹と醤油麹も熟成中でして、どんどん増えていく保存容器にひとりニヤニヤしております。
 仕込み量の参考にと調べたところ、味噌の年間消費量は1〜2人暮らしの場合で約8kgだそう。私は今回初めてということもあり3kg分にしておきました。それでも我が家の台所と道具では、ちょっと大変な量でしたね。大豆の膨らみ方が想定以上だったこともあり、手持ちの容器では大豆と塩切り麹を一度に全部混ぜられなかったのです。結局、鍋2つとボウル1つに分けて作業する羽目に・・・。
 以下、今回のレシピです。所要時間は浸水を除いて、道具の洗浄から片付けまで一人で一気にやって約5時間。広いスペースと大きな鍋類があればもっと短縮可能かと。
 【材料】※出来上がり3kgの場合
  乾燥大豆750g、米麹1.2kg(東山三条の大阪屋で購入した生麹)、塩350g
 【作り方】
  1.よく洗った大豆を水に浸け(最低一晩)、柔らかくなるまで煮る
    ※浸水18時間というレシピを見て、寒い我が家ではさらに長いほうが良かろうと丸1日くらい浸けっぱなしにした結果、2時間くらいで煮上がりました。
  2.塩と麹を混ぜ合わせて塩切り麹を作る
    ※まんべんなく擦り合わせるような感じで。大豆を煮る間にやるのがおすすめ。
  3.熱いうちに大豆を潰し、塩切り麹と混ぜ合わせる
    ※厚手のビニール袋に入れて手で潰すのは原始的ながらけっこう楽でした。固さの目安は耳たぶくらい。水分が少ないようなら適宜煮汁を足します。ちなみに大豆を長めに浸水させておくと、ここで足す煮汁も少量で済み、熟成中に味噌が傷みにくくなるという利点もあるそうです。
  4.混ぜ終わった3.を丸めて団子状にし、ぴっちりと容器に詰める
    ※空気が入らないように押し付けて詰めます。容器はカビ抑制のため、表面積が少なくなるような縦長タイプが良いらしいのですが、私は野田琺瑯レクタングル深型LL(ぬか漬け美人と同じサイズ)にしました。
  5.容器の縁をアルコール消毒し、表面に塩をふってラップで覆い容器に蓋をする
    ※塩蓋をするとか和紙を被せるとか、このへんのやり方は色々です。重しは出来上がり重量の1割という話ですが、家庭で作るくらいの量なら不要という説も。時々カビチェックをしてあげながらじっくり待ちます。
 容器の中のみそは黄色っぽい大豆ペーストにしか見えないのですが、夏を過ぎると急激に熟成が進み、色づいてくるそうです。仕込みがちょうどバレンタインデーだったので、来年はチョコの代わりに茶色く熟成した味噌を楽しみたいと思います。

*1:正確に申し上げますと、閉店前から厨房のガスコンロで乾燥大豆は茹で始めておりました

*2:例の五右衛門。

*3:厚手のビニール袋に入れた茹で大豆を、上から踏んで潰すのです。底冷えのする古民家でこれをやると足元ポカポカ

*4:大豆を茹でる→熱いうちにつぶす→潰した大豆を塩切麹(塩と合わせた米麹)と合わせて味噌玉を作る→味噌玉を保存容器に押し込む→密閉する

*5:とはいえ一週間の営業を終えてからの仕込みだったので、終わって少ししたらさすがに虚脱感がやってきましたが・・・

*6:通称山居新聞