珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

Add some books to my shelf <16>

忘れてもいいように〜Time Binding/片桐ユズル(アレクサンダー・アライアンス・ジャパン, 2020)

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 またまた面白い本に巡り合えた。2015年から毎月開催されてきたお話会「片桐ユズルに聞く。」における氏へのインタビューを元に、生い立ちから現在まで、約90年間の“ユズル史”をまとめた聞き書き
 ユズルさん(と厚かましくもお呼びしたい)の経歴については恥ずかしながらこれまでさほど存じ上げず、辛うじて連想できたのは『ボブ・ディラン全詩集』の装丁くらい。そんな状態で読んだものだから余計に、その仕事の幅広さに圧倒された。英語教育、米国詩その他の翻訳、関西フォーク運動、一般意味論、アレクサンダー・テクニークなどなど、同じ人が手がけたとは思えない。にもかかわらず、一冊を通してみると何の違和感を覚えることもなく、ご本人にとってはどれも自然なことだったのだなあと納得してしまうのが不思議。
 また、各分野に全然明るくない自分としては、注釈が非常に充実しているのもありがたかった。実弟中尾ハジメ氏が全面的に協力されたというだけあり、どの解説・引用にもいちいち興味をそそられる。巻末の著書一覧を眺めても気になる本が多数*1
 ちなみに本書は限定300部の自費出版。ということもあり、企画・編集に携わられたTさんのご縁がなければ自分も知らないままだった可能性大(ありがとうございます!)。昨年末の刊行以来残部は着々と減っており、いま改めて出版してくれる版元を探しておられるそう。手に取る人が少しでも増えればいいなと思うので、そのことも一緒に書き記しておきます。

↑これは公式情報を探していて見つけた予告編動画*2

*1:さしあたり手元に置きたいのはウィリアム・カーロス・ウィリアムズの訳詞集(1965年)。ネットでちょっと探してみたところ、まるで見つかる気がしない・・・。

*2:タイトルに「新刊本2019年」と記されているのは、「こんなにボリュームが膨らむと思っていなかった」(Tさん談)という、動画アップ当時の事情と思われます。実際の刊行は昨年末ですから・・・