珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

珈琲時報(24)『戦後と喫茶店』がスゴイ

・9月になりました。といっても今月の豆、みたいなお知らせは特に無く、ラインナップはいつも通りです。ただし今週はアイスコーヒーにエチオピアを少量足してみようかと思っています。
・話は変わり、『戦後と喫茶店』(鈴木文代*1著・出版も同氏による)を本日ようやく読了したのでそれについて少し。

 目次はリンク先を参照。巻末にびっしり並べられた参考文献から、はじめは長年のフィールドワークを元にした研究者か何かの成果物と勘違いしていました。ところが実際には市井の喫茶愛好家による自費出版だったわけで、もう驚くどころか軽く感動すら覚えましたね。構想、取材、執筆、編集・・・費やされたであろう膨大な時間に鑑みると、まず偉業と申し上げて差し支えなく、とにかく喫茶店に対する著者の打ち込みの深さには脱帽するしかありません。読者それぞれ響くポイントは様々でしょうが、わたくしは日本橋の東洋と日比谷のニューワールドサービス*2について詳しい記事が読めたのが最大の収穫でした。
・ちなみに本書は『閉業喫茶店』と題した第二章において、2010年前後より後に店仕舞した喫茶店を多数取り上げています。翻って2021年も半ばを過ぎた現在、老舗喫茶店閉業の報に接する機会はますます増えました。なんて言い出すととかく感傷に流れがちではありますが*3、こうして形に残す方がおられ、記憶がなくても記録は辿れることを有難く思うばかりです。
・蛇足ながら本文中、著者が『時々「本当に喫茶店好きなのだろうか」と思う』と自問されるくだり(62頁)には、全力でツッコミを入れておきます*4

*1:https://twitter.com/matsutakekissa

*2:こちらには閉店の日にも行っており、探せばそのとき撮影した写真が出てくるはず

*3:直近では西荻のダンテが昨日、8月末で閉店とのニュースに打ちひしがれたばかり

*4:ああでも、こういうパーソナリティをお持ちの方だからこそ為しえた仕事なのかも・・・