店内ではクラシックのレコードもかけているけれど、けっこうバロック期の音源に偏っている。範囲を広げるきっかけになればと、前々から気になっていた吉田秀和の評論を何冊か入手した。これは冬休みの課題図書的に読了。
神戸にいった話を書いたところで、安田謙一さん*1のこの
いつもどおりのロック漫筆とはいえ、これだけの量がまとまるとけっこうな読み応え。なんてこと無い身辺雑記と思ってさらさらっと読み進めていくと、不意にハッとするフレーズが出てきたりするので油断ならない。あと、最終ページの著者近影(見開き!)が格好良い。お二人とも
さて、ここからはいつもの脱線。店主が初めて読んだ安田さんの文章はロ
昨日は神戸に出かけていた。今回の目的はテイクアウト用の箱類や包材の調達*1と、大先輩であられる珈琲屋さん*2への開店報告。
…というのは建前みたいなもので、我々にとって常に“何となくイイとこ”である神戸の街は、用事があってもなくても気晴らしに出掛ける先として不動のポジションを築いている。開店準備が佳境に入った昨秋以降、京都というか店に張り付きっぱななしの日々が続いており、夫婦揃ってそろそろ神戸行きたいモードに突入していた。
目的といってもサクッと済むようなタスクでしかなく、特に何をするわけでもない。それでも現地では海側・山側問わずよく歩くので、運動不足の解消には一役買ってくれる。今回は自分たちのよく行くお店に定休日が多かったのだけれど、そのおかげでようやく初訪問がかなったところもあり、やっぱり良いリフレッシュにはなったのであった。
【今回の初訪問と一言メモ】
欧風料理もん
→木を主体とした焦げ茶系の内装や柱の装飾など、今はなき浅草アンヂェラスを彷彿させる。それでも老舗の洋食店らしい重厚さを感じるのは、板に打ち付けられたリベットのせいだろうか*3。
ちなみに注文したのはオムライス。薄めの味付けな上にソース別添え。ケチャップがかかっていると見た目は決まる反面どうしても味が濃くなりがちなので、薄味好みな店主にはこの配慮が非常に嬉しい。ボリュームもたっぷり。一緒に味噌汁が供されるのもよかった。しっかり出汁が効いていたけれど、もしかしたらフライやらグリルやらで使う魚介のアラだったのかしら。
にしむら珈琲店北野坂店
→以前読んだ伝記本に、日本初の会員制喫茶店だったと書いてあった覚えが。外装は蔦の絡まる煉瓦造りの一軒家風。洋館といえばそうに違いないのだけど、ダークな色合いのせいか少し控えめな印象を受ける。内装は天井廻り縁の装飾が独特。調度の類はドイツともイギリスともフランスともつかず、アールデコ色強めながら特定の様式に括れない感じが面白い。古くて風格ある喫茶店には違いなく、天井が低くても窮屈さは感じず居心地最高。
なお、北野坂店についてはケーキのラインナップが他の店舗とちょっと違う*4。にしむらのケーキといえば御影のセセシオンであり、冬場にはフランクフルタークランツも作っていると聞いたことがある。そしてクランツといえば当然バタークリームであり、かねて注目しているものの、神戸エリアのみに展開するにしむらにはそうそう行く機会がなく、いまだにありつけていない。
国内外のポピュラー音楽を主な素材として執筆活動を続けてきた著者が、平成の30年間を個人史と絡めて振り返った一冊。当ブログでも先日ちらっと取り上げたように、初出はnoteの連載記事*1。
この連載は昨年の正月早々唐突に始まり、1年を一章として30年分コツコツ続いたうえ、終わったと思ったらアウトテイクと称した番外編が始まったりして、最終的には相当な分量にのぼった。それでも店主にとって著者は敬愛してやまない書き手のひとりであり、これタダで読めていいのかしら・・・?と困惑しつつ、しっかりプリントアウトして保管していたのだった。それだけに今回の書籍化は大変うれしい。
書籍の形で一気に通読してみると、今までこれ良いな、気になるな、と思ってきた色々な音楽について、かなりの確率で著者が先達的な役割を果たしてくれていたことが改めてよくわかった。また、ファンの妄想めいた物言いになるのを承知で書かせてもらうと、言及される喫茶店は馴染みのある店ばかりだし*2、ところどころでニアミスしていたこともわかって一方的に不思議な縁を感じている。来月には誠光社で出版イベントもあるとのこと、万難を排して駆けつける所存である。
*1:ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック 1|mrbq|note
*2:七ツ森、クラシック、ジェリージェフ、羽當
当店は本日から17(金)まで冬季休業です。初日の今日は朝からのんびり、適当に本を読む時間も取れました。ということで本棚への追加情報を。
今回の新入荷は“寿屋”(サントリー)の広報誌「洋酒天国」の豆本です。Oさんのご厚意で、ご自宅の所蔵品を置かせていただけることになりました。豆本の存在は今回初めて知ったのですが*1、同封されていた月報によると、12回配本・3年間完結の全36巻構成だったそうです。一冊一冊、カバーには柳原良平のカラーイラストが描かれ、3巻ずつの函入りというたいへんに凝った造り。お預かりしたのは第1回~第4回配本の12冊でして、まずは第一回配本分の3巻:
第13巻 わが盃の酒飲み作法(柴田錬三郎)
第25巻 酒の診察室(木崎国嘉)
を置くことにします。なお、経年のため冊子本体に背表紙から外れてしまっている部分があります。外観は至ってキレイですが、お手に取られる際はその点ご注意くださいませ。
店主はビールはじめ洋酒を飲む習慣がまったくないので、洋酒天国については開高健や柳原良平の仕事として名前に聞き覚えがある程度でした。今回初めて読んだところ、あからさまに男性目線なノリに少なからず違和感を覚えてしまいましたが、「夜の岩波文庫」*2っていうくらいですから、元々そういうテイストが売りだったようですね。しかし、柴錬にしても25巻の木崎国嘉*3にしても、醸し出される昭和感が強烈であります。
*1:調べたらけっこう出てくる。例えば恵文社のwebサイト:洋酒マメ天国 36巻揃い(月報付き)|恵文社一乗寺店 オンラインショップ
*2:開高健自身による名?キャッチコピー。海月書林さんの特集ページにて知る https://www.kurageshorin.com/yoten.html