珈琲山居のブログ

京都市の珈琲店、珈琲山居(こーひー・さんきょ)です。こちらのブログから、お店に関するお知らせや日々のあれこれをお届けします。

音楽本など ~Add some books to my shelf <19>~

SMALL TOWN TALK~ヒューマン・ソングをたどって .../松平維秋(VIVID BOOKS, 2000)

SMALL TOWN TALK~ヒューマン・ソングをたどって・・・・・・

SMALL TOWN TALK~ヒューマン・ソングをたどって・・・・・・

  • 作者:松平維秋
  • 発売日: 2000/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 著者は渋谷百軒店にあったロック喫茶「ブラックホーク」のレコード担当を務めた方。同店で頒布されていたというミニコミ「Small Town Talk」とともに、店名だけはだいぶ前から馴染みがあった。が、20年も前に書籍化されていたとは全然知らず、先日ようやく見つけた次第。本の内容はディスクレビューや「Small Town Talk」の再録、関係者の回想談など。

 掲載されている音源の中には、自分が殆ど通ってこなかったジャンルも含まれていて(例:1960~70年代の英国トラッドなど)、聞いたことのないアルバム、聞き覚えのないミュージシャンもたくさん出てくる。この手の本は辛抱強く手元に置いておくと後から色々繋がったりしてまた面白いので、積極的に本棚の肥やしにしておこうと思った。

 参考:書誌情報を確認しようと検索していて見つけた。

note.com

 

 うたのしくみ 増補完全版/細馬宏通(ぴあ, 2021)

うたのしくみ 増補完全版

うたのしくみ 増補完全版

 

  細馬先生が古今東西の「うた」を掘り下げていくという体の一冊。同名の前著(2014年刊)が出たときから気になっていたものの、完全に読むタイミングを逸してしまっていた。このたび増補完全版として、倍くらいの厚さで再登場。ずっと読みたかった、キリンジ「悪玉」の回も収録されている。が、そこはやはり細馬先生であり、ただの楽曲分析にとどまらず、ポピュラー音楽を糸口にした総合文化論的な趣が濃い。待っててよかった。

 

さよなら、男社会/尹雄大亜紀書房, 2020)

さよなら、男社会

さよなら、男社会

  • 作者:尹 雄大
  • 発売日: 2020/12/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ポップな装丁とは裏腹に内容はなかなかにヘヴィーである。帯のコメントをジェーン・スーさんが書いていたのが目に止まって読んでみた。

 

 家族の味/平野レミポプラ社, 2021)

家族の味

家族の味

 

  2007年刊のちくま新書「笑ってお料理」の改訂版。巻末に対談(和田誠平野レミ)と鼎談(阿川佐和子清水ミチコ平野レミ)が追加されていてそれがだいぶ面白い。和田誠による二色カラーの挿絵も素敵。

珈琲時報(14)中煎りラインナップの状況、など

・5月と同時に販売を始めたルワンダ中煎り、GWの終了を待たずに完売しました。元々量が限られていたものの、中煎りの割にいつになく動きが早かったです*1。せっかくなので少し前に読んだ本と一緒に紹介しようと思っていたのに、タイミングを逸してしまい残念でした。本の方はしばらく本棚に並べておきます。

・そんなわけで中煎りはエチオピアナチュラルの代替品がいずれも終了。にもかかわらず、件のエチオピアは結局6月にずれ込むことがほぼ確定。他に目ぼしい豆も手に入っておらず*2、今月の中煎りはコスタリカのみ、いつもより一種類少ないラインナップでしのぐことにします。

・終了といえば、3月にカフェインレスもひっそり終了しています。カフェインレスについてはこのところ選択肢が少なくて難儀していたのですが、以前使っていたメキシコの新豆が7月入荷との情報が入ってきました。それ以外にもいくつか候補がありそうな雰囲気になってきたので、本腰入れて検討を始めたところです。もうしばらくお待ちくださいませ。

*1:焙煎度別の傾向として、当店では中煎りの売れ行きは比較的緩やかなのです

*2:某商社の新種イエメンを買い損ねたのが悔やまれます

久々に音楽の話

 CDだけで持っている音源が聴きたくなってCDプレーヤーを買ってから、ちょうど1年くらい経ちました。でもなぜかその後も、買うのはレコードばかりです。京都レコード祭りほど大規模なものでなくても、数店舗合同の即売会みたいなレコードフェアって、実はそれなりの頻度で開催されているのですよね。その手のイベントにこまめに通っていると、じわじわと枚数が重なっていくのは言うまでもなく。

 どこかで整理しないといけないのですが*1、長年しみついた習慣に、出先でかかっていた曲を目ざとく(耳ざとく?)チェックする、というのがありまして。またレコードを買うようになり、引っかかる曲が増え、比例して手元の音源もまた増えていくスパイラルからどうにも抜け出せずにいます。ただ、出先でチェックといっても喫茶店での巡りあいが殆どですから、ご店主に直接尋ねればスルスルと詳細が判明し、労せず良い音楽と出会うための貴重な機会になっているのも事実。最近は別々に訪れた珈琲店などで、こんなようなアルバム3枚に引っかかりました。目下それぞれレコードで探し中。各ご店主の皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。

 あ、長いこと全然紹介できていませんが、当店で流している音楽の半分くらいは、入手したての音源です*2。随時覗きに来ていただければ幸いです。

Songs for Dintingue Lovers / Billie Holiday 

  1957年録音。ビリーホリデイなのにオールドタイミ―な雰囲気薄く、洗練された編成と音なのが新鮮。同じレコーディングセッションの音源「Body and Soul」もWEBで聴いてみたけれどこっちの方が好みだった。

 

エリントンのピアノソロまたはトリオ作品

The Duke Plays Ellington

The Duke Plays Ellington

  • 発売日: 2011/04/30
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 モンクのようなタッチのピアノでエリントンナンバーが立て続けに流れていたのが気になり、訊いてみたらエリントン本人だった。かかっていたのがレコードではなかったので、まだ同じアルバムには辿り着けていない。実際、このThe Duke Plays Ellingtonも曲順などがちょっと違う。もしかしたらCDのみの編集盤だったかも。情報求む。

 

Shelly Manne & Co. / S.T.

  1944年録音、1965年初リリース。リラックスした雰囲気とスタンダード中心の選曲いずれも非常に良し。調べてみるとシェリーマン駆け出し時代のセッションらしい。ミュージシャンのクレジットを見せてもらうも、ジョニーホッジスくらいしか知らず。

 

 そういえば自分が店で流している音源についても、ときどき尋ねられることがありますね。これまでを振り返ると、渋谷毅トリオ(1977年の”COOK NOTE”)、チャーリーバードのギターソロクリスマス盤、グールド演奏のバード&ギボンズ作品集あたりは何度となく、これ今も買えるんですか?と聞かれたものです*3

Christmas Album

Christmas Album

  • アーティスト:Byrd, Charlie
  • 発売日: 1994/08/24
  • メディア: CD
 
バード&ギボンズ作品集

バード&ギボンズ作品集

 

*1:先日、某店から梱包用の段ボールを取り寄せて買取依頼の準備だけは進めています

*2:あとの半分は定番、その定番が時々入れ替わったり戻ったりしながら季節が巡っていくのです

*3:COOK NOTEはちょっと難しいかもしれませんが、ほかの2枚はCDで普通に買えるはずです

珈琲時報(13)モカケーキはじめました

・先週からご提供を開始した「モカケーキ」、ネルで濃い目に淹れた珈琲をふんだんに使っています。「モカ」といいつつ当のコーヒーはイエメンでもエチオピアでもないのですが、そこはモカロール*1をはじめとするコーヒー×バタークリーム系洋菓子へのリスペクトとご理解いただければ。あ、でもうちのクリームはヴィーガンですからバターは使っておりませぬ。いろいろと紛らわしくて恐縮です。ともかく今回のモカケーキ、濃厚なクリームが珈琲のビターな風味ですっと切れる感覚がたまりません。ぜひ一度ご賞味ください。

・さて、最近の豆のラインナップについて。中煎りエチオピアナチュラル精製)の代替品、メキシコが残りわずかです。このメキシコが終わったら中煎りにはルワンダを据えます。というのも、肝心のエチオピアがなかなか入荷しない状況なのです。なんとなく予想はしていましたが・・・。当店での取り扱い再開は早くて5月末でしょうか。今しばらくお待ちを。

・それから深煎りのカフェインレス(メキシコ)も、今月上旬にて品切終了となりました。こちらは代替品未定。良い豆が見つかったら再開します。

・ところで昨年のオープン以来、当店の豆を使ってくださっている出町柳のha raさん。先日、お店のインスタグラムでコーヒーのことを紹介いただきました。素敵な写真と丁寧なコメントに感無量です。こちらこそいつもありがとうございます。

 ちなみにha raさんの豆は東ティモール*2。毎週火曜か水曜には補充させてもらってまして、今日も午後には納品予定です。原さんも書かれているとおり、雨のお店ってけっこう良いですよね。折しも朝から雨。あの絶品スコーン*3を落ち着いた店内でいただくのは格別でしょう。納品ついでにお茶していこうかな・・・。

 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 

A post shared by ha ra (@ha_ra_kyoto)

www.instagram.com

*1:成城アルプスなど、いくつかの洋菓子店では定番的ポジションのロールケーキ。ルーツを辿ると、かつて神田小川町にあった老舗洋菓子店エスワイルに行きつくそう。詳しくはパイ日和さんの関連エントリを。これバタクリファンなら必読ですよ!https://pie.at.webry.info/201809/article_1.html

*2:当店でもラインナップに加えていますが、実は焙煎度合いがちょっとだけ違います

*3:いや、スコーンに限らず全部おいしいのは言うまでもない

【お知らせ】GWの営業予定

 このGWは、緊急事態宣言下ということで少し変則的な営業となります。また、ブログトップにて既報のとおり、状況に鑑みて臨時休業等に踏み切る場合には別途すみやかにご案内します。

  4/29(木)から5/3(月)

   → 連日、営業時間を10:00~18:00とします。
     ※通常と異なり、土・日・祝も10時開店です。

  5/4(火)と5(水)

   → 両日とも祝日ですが、普段と変わらず定休日とします。

  5/6(木)以降

   → 今のところ通常どおりの営業を予定しています。

食まわりの本いろいろ ~Add some books to my shelf <18>~

 ここ数か月で、食まわりの本が増えました。このジャンルは昔から一番読んでいるかもしれません。面白そうな新刊が常に出ている印象があり、新しいうちに追いつかないことも多いのですが。

料理の意味とその手立て/ウー・ウェン(2020, タブレ)

料理の意味とその手立て

料理の意味とその手立て

 

 ウーウェンさんが余すところなく語る、料理の基礎と勘所。クッキングサロンの講義録でもあるが、写真は全然出てこないのに教室の臨場感が伝わってくる*1。前々から、この方のレシピはとてもシンプルなところが良いなと思っていた。本書では調理法別、素材別に考え方を体系化してあって更に応用しやすそうなのがありがたい*2。これから自炊を始めるひとが最初の一冊に選ぶというのもアリだと思う。

 版元のタブレは、かつてクウネル編集長でもあった編集者の太田祐子さんがマガジンハウスを退社して立ち上げたレーベルだそう。後半に収められたウーウェン半生記的なテキストにもグッととくるし、長島有里枝さん撮影の料理写真も素晴らしいし、すごく良い本でした。

 つくるたべるよむ/本の雑誌編集部(2020, 本の雑誌社) 

つくるたべるよむ

つくるたべるよむ

  • 発売日: 2020/03/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  料理本についての本、という本の雑誌社らしい一冊。冒頭、久住昌之氏へのインタビュー記事から引き込まれる。料理マンガ原作者のビッグ錠や、ミナミの料理書専門店、波屋書房の棚が大きく取り上げられているあたりにもそのコンセプトがよく表れている。お弁当と家庭料理をテーマにした木村衣有子さんの論考はやっぱり面白い。表紙の卵の絵(写真かと思ったら違った)は現代美術作家の上田薫。

 たすかる料理/按田優子(2018, リトルモア

たすかる料理

たすかる料理

  • 作者:按田 優子
  • 発売日: 2018/01/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  上のウーウェンさんの本から、なぜか本書を連想した。料理本なのにテキスト主体といったところに似たような雰囲気を感じたのだろうか。ちなみにウーウェンさんのもこれも、先日久々に訪れたWAKUSEIさんに置いてあって、偶然に驚きつつお持ち帰り。最近某所で話題になっていたこともあり、改めて読みたくなっていたのでちょうどよかった。

 そば往生/石川文康(2002, 筑摩書房) 

そば往生

そば往生

 

  わかるようでわからない「そば往生」というタイトルは、落語の演目になぞらえたものだった。蕎麦好きとしては、なかなか乙な最期であるように思える。

 日本各地の蕎麦屋めぐりについての章では京都も出てくる。店名は明かされないものの、そのうち一軒はかつて新大宮商店街にあったという。時期は少なく見積もっても20年~30年前。文中の描写からするとこの建物ではないはずだが、商店街のどの辺りだったのかちょっと気になる。

  dancyu 2021年5月号 特集:食堂のしあわせ

 自分の定食屋好きを再確認。第二特集のひとり呑みも、ひとり呑みなんて殆どしないくせに面白く読んだ。井川さんの連載「東京で十年。」は代官山のモカコーヒー。珈琲店が取り上げられるのは珍しい気がする。だいぶ昔に一度だけ行ったことがあるけれど、日当たり良く明るい店内の心地よさが印象的だった。ちなみにこちらの「モカ」は慣用的なそれではなくイエメン専門という意味。当地の豆が簡単に入手しやすいとは思えず、イエメン一本で10年も商われてきたのはすごい。

Spectator vol.42 新しい食堂

スペクテイター〈42号〉 新しい食堂

スペクテイター〈42号〉 新しい食堂

  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 単行本
 

  食堂といえばこれも忘れ難い一冊。なぎ食堂の小田晶房さん、按田餃子の按田優子さんほかロングインタビューが読み応えあり。久々に引っ張り出し、dancyuの隣に並べております。

*1:なんとなく、受験参考書の"実況中継"シリーズを思い出した。あれまだ出てるのかしら。

*2:料理本を見て何か作る、なんて料理の仕方をしなくなって久しいのだけれど、読むなりさっそく回鍋肉を作ってみた。美味しくできました

どんぐり(灯光舎 本のともしびシリーズ) ~Add some books to my shelf <17>~

 先ごろ、灯光舎*1から小さな本が刊行されました。「本のともしび」と題して始まったこのシリーズ、第一弾にやってきたのは寺田寅彦の「どんぐり」。

 選者が山本善行氏(古書善行堂)と聞き楽しみに待っていたところ、寅彦の教え子・中谷宇吉郎による「『団栗』のことなど」を併録したうえ、寅彦の「コーヒー哲学序説」が二篇を繋ぐという、さりげなくも行き届いた流石のセレクトでありました。橙色のカバーに合わせた三方染付(天地と小口に彩色)、表紙の箔押し題字などなど、手の込んだ造本もすばらしい。手元に置きたくなる一冊です。

 わたくし「どんぐり」は昔からたいへん好きな随筆なのですが、真新しい本の美しい書体で読んでみると、これまで馴染んできた岩波文庫版とはまた違った味わいがあります。「コーヒー哲学序説」についても同様。というか今回久々に読み返してみたら、寅彦先生、コーヒー相当お好きですね・・・。「銀座アルプス」(岩波の随筆集四巻、角川ソフィア文庫にも収録)などコーヒーが出てくる先生の随筆は色々あり、あわせて読むのもまた面白そう。

*1:株式会社 灯光舎 - 京都の小さな出版社  代表の面髙さんは『16日間の日記、29日間の日記』(当店本棚にも置かせてもらっています)の「たぶんだぶん倶楽部」メンバーでもあります